9月20日(水)曇りのち晴れ
通り過ぎた台風はとくに大きな被害を残すこともなかった。通り過ぎたあとは快晴かと心待ちにするも天気は曇り。そして朝晩の気温が少しずつ低くなってきた。そろそろ半ズボン、半袖は肌寒さを感じるようになってきた。
昨日の夜雨戸というものを初めて閉めた。ほとんど使うこともなくまだ木の香りが残っていた。乾かすためにカラッと晴れるまでそのまま閉めたままにしておく。
玄関を出てすぐのところにあるムクロジの実もどんどん大きくなってきた。石鹸やなんかに使えるらしい。
ずっと天気が悪く畑に入れず苗たちも行き場を失って小さな部屋のなか身長だけがどんどん伸びていく。
と寝起きで気になって外に出てみたけれど被害らしい被害もなく良かった。少しだけ本を読んで、朝ごはんの時間に。それをすましたら鶏のお世話へ。
まずは水を替える。
キノコ棟に向おうと道を下っていくと一番最初に目に入る田んぼ(通称:四角い田んぼ)の稲は遂に全部倒れてしまった。波を打つ稲とでもいうのだろうか、稲刈りが大変かもしれないなと頭をよぎるもこれはこれで美しいなと少し見入っていた。
水を替え終わったら、昨日集めておいてくれた緑餌を与えていく。
キノコ棟に緑餌を持っていった帰りに畑の様子をみていくと、春菊は春菊らしい葉っぱに生まれ変わっていた。
その東側の赤じそはみんな斜面の方に横たわるように倒れていた。種取りをすると言っていたけれど大丈夫かなと思いつつも、成長した植物は意外と強い、以前ドラム缶でイタリアンライグラスを押し倒す、ドラム缶農法の話を聞いた時に言っていた。
「倒されてもまだ根っこも生きているから、倒れたまま根っこで土作りをして時期が来たらそのまま枯れていく」
根元が折れたりせず、根っこが土の中に入っていられれば生きて種を残すところまでたどり着くのかもしれない。
畑の様子を見回って今日のやることを聞く。雨で畑の土が濡れてしまっているので晴れるまで畑での作業はできないということで銀杏拾いへ。
農道を登って「開墾」を通り過ぎて林道の入口付近までくると、昨日の風の影響もあってかなりたくさん落ちているように見える。
デレキ(地元ではこう呼んでいたが…)で一個一個バケツの中にポイポイと放り込む、バケツの底にコンとあたって気持ちい音を鳴らす。バケツは銀杏をぶつけて音を鳴らす打楽器に早変わり。拾いながら変な形の銀杏を見つけて面白がっている妻。
1/4ほど進んだところで持ってきたコンテンが満タンになってしまった。持ってきた2つのバケツもいっぱいにして一旦家の前まで持っていくことにした。
またコンテナを1つ持って「開墾」までの道を登っていく。あと拾い残しているところは斜面と林道、どちらもかなりの量の銀杏が落ちていて午前中残りの時間を使って拾い集めた。持ってきたコンテナを満杯にしてさらにバケツ1つと半分ほどの量になった。今日は一気にコンテナ3個分の銀杏を拾った。
戻ってくると昨日拾ったイガ付きの栗がパカッと開いていて、開いたやつは取り出しておく作業をしてお昼休憩へ。
午後は空から雲が少しずつなくなってきて晴れ間も見えるようになってきた。政満さんが明日「開墾」に直播で種を蒔く(バラマキ農法)ということで少し増えすぎている植物を減らすために抜き取る作業をすることになった。セイタカアワダチソウは言わずもがな、クサギという植物が増えていて大きくなると太い幹になる。葉っぱを擦ったり、幹を切ったりすると独特香りがする。草刈りをしていた時によく嗅いだ匂いで「臭木」というほど臭くはなく自分は木の良い香りのように感じた。
根っこは一本地中深くに長く伸び、さらに地表に近いところにも張り巡らされ一番養分のあるところをわかっているのはセイタカアワダチソウと一緒だ。根っこの形もよく似ていると思った。まっすぐ上に引っ張るとなかなか抜けないけれど、地面と平行に近い感じで横に引っ張ると抜けやすい。と政満さんのレクチャーを聞いて実践してみた。その植物を観察して、持っている知識と掛け合わせて、どうしたら目的を達成できるのかってことが大事だよなとあらためて思った。知識は持っているだけでは何にもならず、何かの役に立ててこそ意味を成す。
ドラッカーも言っていたけれど、知識はただの情報でその情報が誰に使ってもらえるようにすることがこの「知識社会」で求められることだと。肉体労働だと思っていることでも知識を応用することで作業の効率や生産性があがる。どんな場所でも環境でも「知識労働」という考え方はあてはまる。
大体抜き終わった。
ゴマも少しずつ枯れてきたようでもうそろそろ収穫の時が近づいてきたかな?
「開墾」での作業を終えて「前山」へ栗拾いへ向かう。
今日はあまり落ちていなかった。大きくて美味しいらしい「利平」はまだ枝の上に鎮座している。
戻ってきて農園の中の栗を拾っていく。栗を拾いながすごいことを発見してしまった!栗のイガの正体は棘状の「木」だった。無数の栗の木が栗の実を守っているという驚き。植物は本当に神秘的だ。
「新開墾」の栗を拾ってきた妙子さんと合流して山を降りる。途中なんの実だろうなと思っていた果実はデコポンだということで、葉っぱが全部落ちてしまっていることには気づいていたけれど妙子さんも今気づいたらしく「この間までは葉っぱがついてたのにな~」と言っていた。根元を見ると噛じられたあとがありカミキリムシの幼虫にやられてしまったらしい。
今日の作業はこれにて終了。晩ごはんの食材を採りに畑に向かった。南の山の斜面が夕日に照らし出されて木々がオレンジ色に染まっていく。
キュウリ、ピーマン、パプリカを収穫して戻る。
最後に天狗なすを取りに行くと夕日はクライマックスを迎えた。久しぶりに空が燃えるような夕日を見た気がしてしばらくその場で見入っていた。