5月23日(火)雨のち曇り
昨日の夜、家に戻ってから見た天気予報では午前中から雨の予報だった。朝起きると雨がパラパラと強くはないが降っていた。身支度をしていると今日の草刈りは中止で明日からに変更になったと連絡が入っていた。ひとまずキッコリーズラボ(最近盆栽ベースから名称が変更になった模様)へ向かう。
「木を伐るだけの木こり」は雨の日は仕事ができない。足場が悪かったりして危険だからだ。ヨーロッパでは雨が降っても休まないらしい。日本とヨーロッパでは木の値段や使っている機械なども違うから日本とヨーロッパを比較することにはあまり意味がない。それでも何かできるはずだ。普段はできない、できていないことをやるチャンスでもある。
午前中は雨がそれほど強くないこともあってこれから間伐していくための木を選木していく。午後は雨が上がりそうなので昨日出してきてヒノキをホルツ三河へ持っていくことになった。
「選木」それは複雑にからみあった紐を解いていくような作業でもある。これをこうしたらこうなるし、こうするためにはこっちをこうして、でもこうするとこうなっちゃうな、いやそもそも今これやる必要ある?これを伐るとしたら、あっちに倒すか、それともそっちか、あっちがベストなんだけどあれが邪魔になるな、そしたらあれから倒そうか、いやでもあれを本当に伐ってもいいのか?見てみよう。スタスタスタ、うん、これは向こうに倒せそうだし、上の空間もそんなに開かない、空いたとしても下には金木(灌木、中木など)があるな。next。
基本は劣勢木(周りの木との光争奪戦にやぶれて成長が阻害された木)を選んで間伐する。間伐と言っても市場にも出せるものも合わせて伐っていく。まずは一本伐るものを決めると次はどの木にするのかが決まっていく。等高線上に横に歩きながら伐れそうな木を選んでいく。伐っても引っ張り出せる場所があるのかというのも重要な要素だ。どんな風に作業するのかを想像しながら、今立っている木を避けることができるのか、できなければ邪魔な木を伐るのか、でも本当に伐ってもいいのか、伐れないんだったら別な方向、方法を考えなきゃいけない。
本当に色んなことを考える。あの木はちょっと斜めになってるから、早いとこ伐っておいたほうがいいな、でもそこからなくなったら土を抑えてくれるものがなくなってしまうな、じゃあ違うときにするか。いやでも、それを伐ればその後ろのが伐って出せるな。と何手先かまで読んで木を選んでいく。基本は「選ぶ」▶「伐る」▶「出す」だけれど「選ぶ」▶「伐る」▶「出す」▶「選びなおす」▶「伐る」▶「寄せる」▶「伐る」▶「出す」となったりもする。伐ってみたら意外と上空の空間が空きすぎるかもと思ったら、最初に選んでおいた木を変更することも出てくる。木は動かないけれど状況常に変わっていくものだ。仕事というのはそういうものだと思うし、サルサも踊る相手によって変わるし、曲によっても変わる。リードをするからある程度予想はつくけれど、相手だって思いもよらない動きをすることがあるかもしれない。予定調和な動きだったそれこそつまらないものになる。はい、これやったらこれね、ああそれね、次はこれやって、その次はこれ、最初はルーティンみたいなものがあったほうが踊りを覚えていくのにはいいけれど、退屈してくる。(ここで暇と退屈の倫理学が!)
とそれとは違うけれど、予定は変わってくるものだ。もちろんみんなの目線を合わせるためには必要なことだけれど、いざ始まったら状況は刻一刻と変化していくものだ。どんな仕事でも一緒だと思う。介護をやっていてもおじいちゃん、おばあちゃんの動きや感情だって毎日、へたしたら数十分おきに変わるかもしれない、提供するサービスやその時間は決まっていても、その変化に合わせていくことが求められる。
ここに立っている木達も高齢の老木達だ。変わっていく状況を見極めるために引き出しに色々と詰め込んでくことが今僕がやるべきことだ。
途中、鹿が寝床にしている場所があった。寝屋と言うらしい。
ヤマアジサイという木も生えていて、中が空洞になっている。乾くととても硬くなって、この木で火起こしができるそうな。
「しばらくはおれがいなくても伐れるでしょ」と田實さん。選木貯金をしてまた後日の伐倒に備える。間伐された森は美しい。
というところでお昼になった。「隙間だらけ」になってしまった弁当をいただく。
午後は丸太をトラックに積む作業から、全部で11本出してきていた。それをトラックに積むとこのぐらいになる。トラックにどのくらい積めるのかの目安を掴んでいく。
ホルツについて、市にだされる丸太を眺める。やっぱりみんな面を綺麗に切ってある。機械なのかチェーンソーなのかは分からないけれど、見た目もやっぱり大事ということか。人間も木も見た目以上に中身も大事だ。中身にどんな価値を求めるかによるけれど。
今日は丸太を下ろして戻ってきて仕事は終わった。
帰りにふと行ってみたいと思っていた近くのコーヒー屋さんへ寄ってみた。美術珈琲。もと銀行らしい。
一息ついて本を読んで、1時間ほどで閉店の時間になったので帰宅。