12月27日(火)
もう遠のいていっている火曜日の記憶を呼び覚ます。写真や文字が残っていなければ思い出せないんじゃないかというくらいに記憶というのは曖昧だ。だれかに「こうこうこうで、色々あって、こんな日だったよ」ねなんて言われたらうっかり信じてしまうくらいに曖昧だ。でも幸いにも写真を残しているんだ自分は。
ということで残っている写真の解説をするようにあの火曜日を振り返ってみよう。
そう緑餌を集めようと思って広畑へ向かうとそこには鹿に食い荒らされた大根が散らばっていた。
鹿が森から出てくるようになってしまった原因は多分に人間の仕業だ。山に木は生えてはいるけれど、人間の好む木で覆われてしまった森は鹿達が好む木を生えにくくさせてしまって、山の中に食べるものがなくなってしまった。そんなツケが回ってきているのだろう。
鹿も食べるものがないからここに来て食べるのもしょうがないよな、でもせめて最後までちゃんと食べろよとそこには厳しい言葉をかけながら大根を集めて鶏たちにあげた。
その後は里芋の収穫をしたようだ。里芋5kgの注文があったのでその分と朝市の分とで10kgぐらい収穫する。今週の朝市はいつもの金曜日から明後日、木曜日へと変更になっている。西の畑だけでは足りず、南の畑の冬眠中の里芋の籾殻布団を剥ぎ取って、スコップで掘って揺すり起こす。
こっちの里芋は株も大きく子芋、孫芋までしっかり育っていて大家族を形成している。
掘り終わった里芋は水で洗って泥を落とす。冬によく冷えた水に里芋を洗うためとはいえ素手(手袋したらいいじゃないと心の声が何度も叫ぶ)を突っ込むのは少し躊躇する。が自分はどこまで耐えられるのだろうかという戦いも好きには好きなんだ。心に火を灯して、灯したところで手は温まることはないんだけれど、水のなかで里芋をゴロゴロと転がして芋と芋がくっついてできる隙間の泥も落としていく。
そうとう着込んでいるので体の中心は暖かいままだったので、体は自分の一部があまりに冷えすぎると逆に温めようと頑張ってくれるらし。よく耐えた手はそのあとすぐに暖かさを取り戻した。次は金柑の収穫だ。これも1kgの注文があったのでいつもの倍収穫しなければならない。
金柑もまた収穫してもしてもなかなか溜まっていかない。金柑の収穫はなかなか大変だ。
ようやく収穫を終えて、途中で金柑の収穫からスダチの収穫に向かっていた妻のもとへ向かった。途中でナゾの木の枝の写真を撮っている。そんな暇があるならさっさと向かえと自分に突っ込みたくなる。そうは言ってもあーだこーだ考えてたいそうなカメラを構えて何分もそこに居るわけじゃない、それはほんの数秒のこと済んでしまう。ポケットにスッと収まる手のひらサイズのGRのお陰だ。電源を押すとコンマ数秒かで撮影態勢が整う。まるで西部劇のガンマンが銃を取り出して撃つ動作(よりはもちろん遅い)のようにサッと取り出して撮ったか撮らないか分からないくらいするりと撮影できる。そんなGRの説明をしている時間はない、スダチのもとへ…いや妻の元へ急がねば。
スダチは大体採り終えていたみたいで少しだけ手伝って戻ることにした。スダチはほとんど柔くなってきていて、あの全盛期のハリが失われつつある。みかんみたいに当分を蓄えていくことで酸味が失われるのだろうか?採ってはいるけれどスダチはあまり家の料理には出てこない。
戻りがけに大根を収穫していた。どうやらこれは漬物用の大根らしく、4~5cmくらいの太さのものを選んで収穫していた。他の場所の大根は食われまくっていたけれど、ここの大根はほぼ無傷だ。
収穫した大根は葉っぱの真ん中の成長点(?、ここから新しい芽が出てくる)を取る。そうすることで新しい芽に根本にたくさん蓄えた栄養を行かせないようにして美味しさを維持させる。
そしてまたしても水洗いだ。軍手を履いてゴシゴシ、とれないところはたわしでゴシゴシ。水の冷たさに慣れている手とはいえ凍みる、いやいや滲みる。
それでもこれが美味しいタクワンになって数ヶ月もの間ご飯のお供になってくれるのだと思えば今日のほんの数時間の辛さなんて乗り越えられると思いながら大根をゴシゴシと洗ってキレイにしてあげられる。
里芋も今日の天気で乾燥が早い。
干し芋はキレイな飴色になってきた。
そんなところで午前中の作業は終わった。
午後は午前中に洗った大根を干す場所を確保するためと赤カブがだいぶ乾燥してきたので、赤カブの漬物づくりと大根を干す作業を同時にやっていく。
赤カブは葉っぱの部分を包丁で切り離す。
大根は赤カブを干した時と同じ様に藁で束ねて竹に引っ掛けておく。
その後は今朝鹿が少し齧っていった大根を切干大根に。
漬物組は作業を開始。今回はカブの量が11kgだったので、その量の4.5%の塩だいたい500gと同量の糠500g+唐辛子、昆布を混ぜたものを用意しておく。カブはたらいに入れて、塩(この塩は計った塩と別)だけでもんでおく。カブの表面に傷をつけるという程度でOK。
樽のそこに混ぜたものを少し敷いておく。
そこに赤カブから並べていく。なるべく隙間が空かないようにして。
一段並べ終わったらその上に混ぜた魔法の粉をまぶしていく。
そしてまた並べていく。
赤カブが終わったら、今回は日野菜かぶも一緒につける。
それも並べ終わったら、残っていた魔法の粉を全部カブの上にあけて隙間にも詰めていく。
最後は先程カブから切り離したカブの葉っぱ全部を使って、上から蓋をするようにして敷いていく。その上に消毒した落し蓋を置いて、漬ける量の倍の重さの漬物石を置いたらあら完成。
というところで火曜日の写真は終わっている。その後も時間は流れていったのだから何かしらをしているとは思うけれど夕飯に何を食べたのかも思い出されない29日木曜の朝、火曜日にタイムスリップしてみた。